この不景気の中ほとんどが苦戦続き・・・そんな中やはり百貨店アパレルなども影響を受けていたがここに来てちょっとづつ変化が見られるようだ!
長年苦戦を強いられていた中高価格帯のアパレルブランドが、にわかに活気づいている。
昨秋からの堅調な動きが震災後も持続
4月の売上高前年比を見ると、国内アパレルメーカー最大手のオンワード樫山は、「23区」や「ICB」などの基幹ブランドが牽引し4%の増収となったほか、「ニューヨーカー」を率いるダイドーリミテッドも同8%増と躍進した。「ナチュラルビューティーベーシック」や「マーガレット・ハウエル」などを擁するサンエー・インターナショナルに至っては、同12・4%増と大幅に伸ばしている。
■リーマン後の不振からようやく抜け出す
理由の一つは、東日本大震災による需要の後ずれだ。
3月は、電力不足の影響で、主要販路の百貨店やファッションビルが営業時間を短縮。アパレルメーカーの顧客層の中心であるOLなどの購入機会が激減した。結果、春物や初夏物を買いそびれた消費者が、営業時間が正常化した4月になって殺到したのだ。実際、ヤング向けブランドや、30~40代をターゲットにしたキャリア層ブランドなど、OLをターゲットにしたブランドは他のブランドよりも回復が早かった。
ただ5月以降も堅調な売り上げのトレンドは続いている。昨年に比べて、売り上げの大きい土曜日が1日少なかったが、オンワードは前年並みの水準を確保した。ダイドーも3%の伸びを記録している。ユニクロやしまむら、ポイントなどの衣料専門店各社の既存店が軒並み減収だったにもかかわらず、だ。
「震災後に回復の鈍かったシニア向けブランドも売り上げが回復し始めている」(三陽商会)ほか、レナウンの「ダーバン」をはじめとした40代を中心とした紳士服が好調な売れ行きを見せるなど、客層も徐々に拡大。アパレル全体で底入れが鮮明になってきた。
実は、潮目が大きく変わったのは震災前だ。「23区」など大手アパレルの基幹ブランドを中心に需要が戻り始め、年末にかけては多くのブランドが前年実績を上回った。今年に入ってからも、「好調が続いており、震災が起こる前は今年こそ増収にしたいと意気込んでいた」(阪本直也・三陽商会紳士服企画部長)という。
流れが変わった要因について、SMBCフレンド調査センターの田中俊・主任研究員は、「低価格商品を買うこと自体がブームだった流れが去り、身の丈に合った消費が始まった」と分析する。アパレルメーカーはユニクロなどファストファッションの台頭やリーマンショック後の消費低迷に、長らく苦しめられていた。が、節約ムードがようやく緩和され、高額衣料にも目が向くようになったというわけだ。また、たとえばオンワードが一部ブランドに投入しヒットした軽量の「エアージャケット」を多ブランドへ拡大展開するなど、点のヒットを面展開したことが寄与した面もある。
震災の影響によって、3月以降は再び低迷する懸念はあった。実際、営業時間短縮の影響で、売り上げが3~4割落ち込む日もあったが、現在は震災前の勢いを取り戻しつつある。「ここまで回復が早いとは思わなかった」(田中英信・オンワードホールディングス執行役員)とアパレルメーカーですら驚きを隠さない。
半年以上にわたる回復トレンド。これを受けて、業界内には「良い物で長く着ることができるアパレルブランドへの回帰が始まった」(大手アパレル)と、先行きを楽観視する声も出始めている。
■今秋の失速回避へ 商品開発に傾注
ただし、今のままの勢いを持続できるかは未知数だ。「昨年秋からの節約ムードの緩和はあくまでも一時的なものにすぎない。10月以降、回復基調を持続することは難しい」と語るのは、アパレル業界に詳しいオチマーケティングオフィスの生地雅之氏。多くの客が、昨年秋から今年の夏にかけて春夏物と秋冬物をひととおり買いそろえてしまうため、需要が一巡し、再び減収トレンドへ戻る可能性が高いだろうと指摘する。
証券アナリストの間でも「今年後半には震災後の異様な高揚感が消え、所得をシビアにとらえるようになるだろう。特に中高価格ブランドは厳しくなる」(田中研究員)との見方も根強い。
もちろん、アパレル各社は手をこまぬいてはいられない。客を引き付けるため、秋冬の商品開発にかける意識は例年になく高い。三陽商会では発熱などの機能を持った素材を活用した商品を積極的に売り出す。オンワードも基幹ブランドで人気の高いブーツやストールといった雑貨を拡充しているほか、ニットとスカートなどのコーディネート販売を強化するなど、試行錯誤を続けている。
が、アパレル各社が本格的な復活を果たすには、過去のブランドを見直すなど大胆かつ新たな価値創造が欠かせない。巡ってきた好機を生かし、長いトンネルを抜け出せるか。真価を問われるのはこれからだ。
(鈴木良英 =週刊東洋経済2011年6月18日号)
※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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